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#2 「レーシングカーってナニ?」
TEXT / 岩崎 祐一郎
モータースポーツのリアルな姿を皆さんにお伝えしていくこのコラム。今回は知ってトクする(?)ウンチク系。サーキットで、お茶の間で、もちろん行きつけのスナックでもドンドン使って下さいな。えっ、オンナが口説けるかって? それはどうかなぁ・・・
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先月このページで書いた基本的なマシンの製作工程を読んでいただき、舞台ウラの苦労が多少は理解していただけたかと思います。華やかに見えるレースも、各チームが影ながら努力をしていればこそ成り立っているのです。そこで、今回は苦心の末に出来上がったマシン、『レーシングカー』についてお話しします。レースの変遷やレーシングカーの種類を知っていただくことで、モータースポーツがより一層楽しいものとなることでしょう。

レーシングカーの定義


一般的にレーシングカーは、「特定のフィールドでスピードを競い合うための専用車両」と定義されています。しかし、ひと口にレーシングカーといっても、F1とスープラの改造車では、スタイリングが全然違いますよね? かたや単座でタイヤ剥き出し、かたや街で見かける市販車もどき。明らかに別モノだけど、レース用のマシンであれば、マーチやKカーも全てレーシングカーと呼んで差し支えないのです。F1に代表されるオープンホイールは、『フォーミュラカー』。スーパーGT選手権スーパー耐久などで見られる市販車ベースのマシンは、『ツーリングカー』と呼ばれています。

レースの変遷

日本を含め世界的に見ても、レースは市販車の競争からその歴史がスタートしています。もともとは「誰が一番速いか腕だめししよう!」といった、牧歌的な発想のもとにクルマを持ち寄って始まったのでしょうが、テクノロジーの進歩やメーカーの販売戦略などがレースと密接に絡みあって、現在のようなスタイルが確立されていったのです。つまりツーリングカーレースの歴史はモーターレーシングの誕生とともに始まったのです。
一方、フォーミュラカーは、市販車の速さを追求する過程で、走りと直接関係がないパーツを次々と取り外し、合理化した結果に生まれました。ライトや泥除けがなくなり、複座から単座になり、現在の体裁に近づいたのです。ドライバーの能力やテクノロジーなど、レースの本質、コアな部分を抽出した特殊なジャンルといえます。

移動、運搬に革命をもたらした『車輪』は、紀元前4000年〜3000年頃、シュメール人によって発明された。人力、馬力、蒸気機関、内燃機関へと動力が発達していくことで、1886年、人類はクルマを手にするに至った。わずか9年後の1895年、初の自動車レースが開催されている。クルマの歴史はレースと共にあるのだ。

フォーミュラカー


レースと聞いて、みなさんが最初に思い浮かべるのは、おそらくフォーミュラカーレースのトップカテゴリー、『F1』ではないでしょうか? メーカーやスポンサーの持ち込んだ巨大マネーが動くF1グランプリは、世界を股にかけて競われる大掛かりで華やかなイベントです。ドライバーからエンジニアまで一流のスタッフが集められ、世界選手権の冠が示すとおり、モータースポーツ界の頂点に君臨しています。
フレームビルダーによって開発されたシャーシに、エンジン、タイヤ、オイルなどのメーカーが参加して他を圧倒するモンスターマシンを造り上げます。F1はドライバーやチームの競争であると同時に、メーカー同士の開発競争の場でもあるのです。自社が参加するチームが目覚しい成績を収めれば、市販車の販売拡大に繋がりますから、どのメーカーも勝つためには青天井に等しい予算と最新のテクノロジーを惜しげもなく投入してきます。F1で優勝するということは、それほど宣伝効果が高いことなのです。
ただし、コストの高騰やカテゴリー自体の特殊性のため、新規でチームを立ち上げて参加することは極めて困難。90年代初頭をピークに出走台数は減少し続け、人気にも陰りが見えてきました。F1の人気凋落は下部カテゴリーにも確実に影響を及ぼしていて、わが国のトップカテゴリー、『フォーミュラ・ニッポン』も参加チームの減少と観客の減少に悩まされています。
その存在すら危ぶまれているトップフォーミュラですが、レースの現場で試されているテクノロジーの先進性は目を見張るものがあり、ここで磨き上げられた技術が近い将来あらゆるカテゴリーのレースに導入され、さらには市販車に活かされていくのです。

ツーリングカー


フォーミュラカーレースの人気が下降の一途をたどると、逆に人気を上げたのが、日本の『スーパーGT選手権』、ヨーロッパの『DTM(ドイツツーリングカー選手権)』、アメリカの『NASCARネクステル・カップ・シリーズ』といったツーリングカーレースのトップカテゴリーです。パッと見はいわゆる『ハコ車』の体裁を繕っていますが、人気の上昇と共に参加するチームもクルマの台数も増え、チーム間の競争が激化。相乗効果的にマシンの性能が進歩して、いまやF1との違いはボディがあるかないかといった程度にまで、テクノロジーの粋が詰め込まれています。しかし、街中でよく見かけるクルマで競われるので、ファンにとってはフォーミュラよりもこっちの方が親しみやすいのでしょう。
また、趣味でレースを楽しんでいる人たちにとっても、コストパフォーマンスに優れるツーリングカーは魅力的。入門カテゴリーならば、簡単なチューンで気軽に参加できるので、レース未体験の方でもコツコツとマシンを製作していくことが可能なのです。

初心者用のレーシングカー


フォーミュラカーレースにも『FJ1600』や『フォーミュラ・スズキ』といった入門カテゴリーはあります。しかし、専用の車体はそれなりに高価ですし、トランスポーターの手配やチューニングの費用もばかになりません。やはり毎月のお小遣いをやりくりして参加するには、手持ちのクルマや格安の中古車で始められるツーリングカーを選択する方が妥当でしょう。特にこれからレースを始めようとしている人は、身の丈にあったクルマ造りを心がけてください。近年のF1やバブル崩壊後のフォーミュラ・ニッポンを見ての通り、結局のところムリは長続きしないのです。お金をいっぱいかけるよりも、まずはモーターレーシングそのものを愛することから始めてみてください。そして長く続けてください!


次回は、レーシングカーの運動性能をアップさせるために必要な、『エアロパーツ』と『ホイールアライメント』の基礎知識をお話ししようと思います。レースを始めたい人にはもちろん、観戦専門の人も要チェック! お楽しみに!


岩崎 祐一郎(いわさき ゆういちろう)

昭和60年よりモータースポーツに関わる。当初、某ワークスチームのサービススタッフとして、全日本選に携わり、以降、クラブマンレースの監督、GT選手権の監督などの経験者。過去に某クルマ雑誌にも、コラムなどを連載していた。自らもドライビングをし、鋭い観点から、スクーリングなどの展開もおこなっている。モータースポーツをこよなく愛し、もっと広く、沢山の人に真のモータースポーツの楽しさを理解してもらえるよう、日々努力している車バカである。
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