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MSCコラム
#3 運動性能の向上 その1「空気抵抗ってナニ?」
TEXT / 岩崎 祐一郎
レーシングカーの運動性能を向上させるには『エアロパーツ』や『ホイールアライメント』の知識が必要不可欠。出っ歯スポイラーに竹槍マフラー、後輪がハの字に開いたシャコタンを若い頃に転がしていたって人、そっち系のチューニング技術はすべて忘れて読んでください。
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エアロパーツ」という名前、クルマ好きの皆さんならよく耳にしているかと思います。レース用、公道用を問わず様々なエアロパーツが出回っていて、クルマ雑誌でも頻繁に特集が組まれるほど注目度の高いアイテムです。「アレって単なるドレスアップ用だろ?」と勘違いされている方もいらっしゃいますが、エアロパーツは、「空気抵抗を低くしてダウンフォースを得るためのパーツ」で、レーシングカーの運動性能や高速安定性の向上には欠かすことのできないものなのです。
「空気抵抗ってナニ?」とか「ダウンフォースってナニ?」といった疑問が、すでに皆さんの頭の中を支配しているんじゃないでしょうか? 疑問にお答えしながらエアロパーツのことを深く知っていただくために、簡単な実験を交えながらお話をしていこうと思います。

空気抵抗

エアロパーツを理解するには、クルマの大敵「空気抵抗」についての知識が必要となります。空気抵抗とは、「物体表面と空気との摩擦により発生する抵抗のこと」・・・なんですが、難しい理屈ではピンとこない方もいると思いますので、ごくごくカンタンに下敷きと扇風機を使った実験で説明してみましょう。よろしければ皆さんも一緒に実験してみてください。
まずは下敷きを手に持って、扇風機の前にかざしてみてください。図-1のように風に吹かれた下敷きがバタバタ暴れて飛ばされそうになりますよね? この風が下敷きを飛ばそうとする力、空気が物体を押さえつける力が「空気抵抗」です。
下敷きと同じく、すべての物体は風が当たると空気抵抗が生じます。ましてやクルマは走るモノ。風に煽られるまでもなく、自ら空気の壁に向かって突進しているのです。
このクルマを押さえつける空気の力は、車速の2乗に比例して強くなっていきます。そのため、高速で疾走するレーシングカーにはことのほか影響が大きく、速ければ速いほど空気が邪魔をして本来のエンジンパワーが発揮できなくなってしまいます。速く走るためには、何とかしてこの厄介な空気と折り合いをつけなければならないのです。

アンチ空気抵抗

「いかに空気抵抗を減らすか」というテーマにレース界は早くから取り組んできました。
エアロパーツが開発される以前は、クルマの正面から見た面積を小さくすることで抵抗を減らすことが考えられました。1930年代には自動車の最高速更新にチャレンジする目的で、UFOやミサイルのような鋭いシルエットのマシンが作られたりもしました。
ペラペラの下敷きならば図-2のように、垂直に立てて風が当たる面積を小さくしてあげれば空気抵抗を減らすことが出来ます。しかしクルマにはタイヤやエンジン、ドライバーが乗るスペースなど、なくてはならないパーツが多く存在するので、正面から見た面積を小さくするにも限界があります。
試行錯誤の末、面積を小さくするかわりにクルマが空気の壁をスルリと通り抜けられるボディ、流線型デザインが誕生しました。この流線型のレーシングカーが1950年代から1960年代半ばにかけて、ラップタイムを大幅に縮めていったのです。

ダウンフォース

流線型デザインの登場でレーシングカーが速くなるにつれ、またもや新しい課題にブチ当たりました。コーナーリング時の安定性の問題です。
クルマは高速でコーナーに突っ込んでいくと、外側のタイヤにグッと負担がかかり、その分内側のタイヤが浮いた状態になります。この体勢ではコーナーリングからの立ち上がりに余計な時間がかかってしまいます。より速くコーナーを回りきり、次のセクションに向かわなければいけないレースにおいては、内側のタイヤもピタッと路面に密着していた方が断然有利なのです。

そこで、空気の力を逆に利用してクルマを路面に密着させる力、ダウンフォースを得る方法が考えられるようになったのです。
具体的にどのようにしてダウンフォースを得るのか? ここでまた下敷きを使って実験をしてみましょう。図-3のような角度で扇風機にかざしてみてください。下敷きを下方向に抑えつけるチカラ、ダウンフォースを感じることができますよね? この実験の原理と同じ発想で作られたのがレーシングカーの象徴、『リアウイング』です。
リアウイングを最初に取り入れたのが、1966年に登場したシャパラル2・Eというレーシングカーでした。巨大なリアウイングを取り付けることでダウンフォースを得るという斬新なテクノロジーは、当時のアメリカで開催されていたCAN-AMシリーズにおいて圧倒的な速さを見せつけました。シャパラル2・Eの活躍でリアウイングの優位性が証明されると、瞬く間に様々なチームやカテゴリーへと波及していったのです。
F1界にこのテクノロジーが持ち込まれてからは、ウイングのみならずボディ全体を使ってダウンフォースを得る楔型シェイプやグランドエフェクトカーなど、時代と共に様々なエアロ・パッケージが開発され、目覚しい進歩を遂げました。
ツーリングカーの世界においても、フロントスポイラー、カナード、サイドステップ、ウイングなどのエアロパーツが次々に開発・改良されて、ことロードレースにおいては今やほとんどのカテゴリーで使用されています。


運動性能の向上 その2に続く・・・


岩崎 祐一郎(いわさき ゆういちろう)

昭和60年よりモータースポーツに関わる。当初、某ワークスチームのサービススタッフとして、全日本選に携わり、以降、クラブマンレースの監督、GT選手権の監督などの経験者。過去に某クルマ雑誌にも、コラムなどを連載していた。自らもドライビングをし、鋭い観点から、スクーリングなどの展開もおこなっている。モータースポーツをこよなく愛し、もっと広く、沢山の人に真のモータースポーツの楽しさを理解してもらえるよう、日々努力している車バカである。
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