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MSC COLUMN
MSCコラム
#3 運動性能の向上 その2「エアロパーツ」
TEXT / 岩崎 祐一郎
前回の扇風機と下敷きを使った実験、いかがでした? 「ヘェー」ってカンジでしたよねぇ。夏休みの自由研究にもぴったりなので、家族総出で子供の宿題を手伝わなきゃいけない8月後半になったら丸パクリ・・・じゃなくてナイスなインスピレーションを授けてくれそうですね。
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前回は空気抵抗とダウンフォースの関係を簡単な実験を交えて説明してみました。空力の仕組みはある程度ご理解いただけたかと思いますので、今回は空力理論を皆さんのマシン製作に活かすために、「エアロパーツ」について説明してみようと思います。これから始める人も、すでにレースを楽しんでいる人もぜひ参考にしてください!

ツーリングカーのエアロパッケージ

スーパー耐久シリーズのようなルールで改造が制限されたカテゴリーの人気も手伝って、市販の段階からサーキット走行を意識したエアロパーツが取り付けられている車種も多くなってきました。空力処理をまったく施していないクルマと比べてみれば、その効果には歴然とした違いがありますが、ツーリングカーはそもそもが街乗り用に作られたモノ。フォーミュラのように空力を極めた設計にはなっていないないので、エアロパーツを取り付けたからといっても空気抵抗を減らすのも、ダウンフォースを得るのにも限界があります。
クルマの下面をフラットに処理にしているフォーミュラとは違い、ツーリングカーの下面は剥き出しのままのギヤボックスマフラー等で凸凹しています。この凸凹に空気がぶち当たると、クルマの下面で乱気流が起こったり、流れが滞ったりしてしまいます。ちょうど高層ビルが風を遮り、「ビル風」と呼ばれる強風を発生させるのと同じような現象が起きるのです。
「凸凹をカバーで覆っちゃえばいいじゃん」と思うかもしれませんが、レギュレーションで禁止されているのでその手は使えません。 そこで、ツーリングカーの場合、下面に流れ込んだ空気を「いかに早く追い出すか?」ということに注力してエアロパーツを開発します。フロントスポイラーの開口部を大きくしたり、サイドステップやリアスポイラーの形状を工夫するなどして、空気の通り道を用意して逃してあげるようにするのが基本的な考え方になっています。下面を大量の空気が通っているので、路面に密着するほどのダウンフォースは得られなくなってしまいますが、スポイラーウイングプラスカナードと呼ばれる小さな翼を取り付けることでダウンフォース不足を補いながら空気との折り合いを図っています。

エアロパーツの材質

エアロパーツには主にFRP製とカーボン製があります。
FRP(Fiber Reinforced Plastics)はガラス繊維でプラスティックを補強した素材です。さまざまな形状に加工しやすいという素材特性があるため、長らくエアロパーツの製作にはFRPが用いられてきました。
しかし、現在ではフォーミュラでもツーリングカーでも、エアロパーツの多くは、『カーボン』という素材で作られています。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿などにも利用されているので、皆さんも名前は聞いたことがありますよね?
カーボン(carbon)とは直訳すると『炭』のことなんですが、焼き鳥屋さんで使われている固形燃料とは別ものなのでご注意を! レーシングカーの製作でいうところのカーボンとは、炭素繊維(カーボンファイバー)のことを指しているのです。
このカーボン、アルミの約4倍も頑丈で衝撃にめっぽう強く、しかも超軽量という素材特性を持っています。まさにレーシングカーにはうってつけの素材で、1981年に登場したカーボンファイバー・モノコックのF1マシン、マクラーレンMP4/1が驚異的な戦闘力を発揮したのをきっかけに、ぞくぞくとレーシングカーに取り入れられていきました。今ではカーボンなくしてレーシングカーは作れないといっても過言ではないほど、エアロパーツのみならず、さまざまのパーツがカーボンで製作されています。

カーボンの種類


カーボンは製造工程の違いで、大きく2種類に分けられています。一般車両にアフターパーツで取り付けるウイングスポイラー類に多く使われているのが、『ウェットカーボン』。フォーミュラのボディやサスペンションアーム、GT選手権のウイングスポイラーなどに使われるのが『ドライカーボン (コンポジットカーボン)』と、それぞれ呼ばれています。
ウェットカーボンもドライカーボンも、魚のウロコのような波文様で、見た目では違いがわかりません。しかし、最も重要な『強度』と『重量』が実は大きく異なります。魚のウロコついでに干物に例えるなら、ウェットカーボンは一夜干し、ドライカーボンはかつお節といった感じでしょうか?

ウェットカーボンは樹脂を染み込ませたカーボンファイバーを自然乾燥させる、FRPと似た工法で成型されてます。水気も油も残った一夜干しのような状態ですから強度も重量もFRPよりも少しだけマシといったレベルです。
かたやドライカーボンは、ウェットカーボンの工程にプラス、特殊な薬剤をつけてオートクレーブ釜という設備で焼いて凝固させています。高温高圧で焼くので、余分な樹脂が取り除かれ、超軽量・超高強度が実現します。干してから燻製にされたかつお節のように水気も油も抜けきってカチンコチンに引き締まっているのです。
このドライカーボンこそがレーシングカーには最適の素材なんですが、専用設備が必要なうえに、あまりに手間がかかってしまうので、製作できる工房も限られています。もちろんコストも驚くほど高くなってしまいます。
そのため、今のところドライカーボンを使用しているのはトップカテゴリーに参加している豊富な資金力を有するチームが中心。いくらモノがいいとはいっても初級カテゴリーに参加しているアマチュアドライバーにはお薦めできません。趣味でレースを楽しむのであれば、手ごろなウェットカーボン製のエアロパーツをセレクトした方が賢明です。
お財布の中身と相談しながら、マシンをコツコツと仕上げていくのも、なかなか楽しいもんですよ!


運動性能の向上 その3に続く・・・


岩崎 祐一郎(いわさき ゆういちろう)

昭和60年よりモータースポーツに関わる。当初、某ワークスチームのサービススタッフとして、全日本選に携わり、以降、クラブマンレースの監督、GT選手権の監督などの経験者。過去に某クルマ雑誌にも、コラムなどを連載していた。自らもドライビングをし、鋭い観点から、スクーリングなどの展開もおこなっている。モータースポーツをこよなく愛し、もっと広く、沢山の人に真のモータースポーツの楽しさを理解してもらえるよう、日々努力している車バカである。
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