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EXPERT STORY
エキスパートストーリー
レース界の番長、かく語りき (4/8)
レーサー / 黒澤 琢弥
慣れないアメリカで苦しい戦いを強いられた番長に、さらなる追い討ちをかけたのが、なんと唯一見方であるはずの所属チーム。フタを開けたら、あらビックリ!? 日本のジョーシキでは考えられないトンデモ運営体制は笑いなくして・・・じゃなくて涙なくしては語れないのだ。
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エキスパートプロフィール
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<strong>黒澤</strong> 琢弥 イラスト

黒澤琢弥インタビューその4
番長 in アメリカ-2 デイル・コイン・レーシング

>MSC(以下省略):黒澤さんと共に過酷なCARTを戦ったチーム、『デイル・コイン・レーシング』ってどんなチームだったんでしょう?

黒澤(以下省略):デイル・コイン・レーシングはお金の苦労が絶えない貧乏チームだったな。ニューマン/ハ−スやペンスキーといったトップチームと比べると10分の1の予算しかないんだ。日本から持ち込んだ8億円のスポンサーマネーも、実は5年前の1995年シリーズの予算規模で、2000年シーズンを戦うには、まるで足りていなかった。

>事前にリサーチしたうえで、充分な予算を組んでいたんじゃないんですか?

話が遡るんだけど、95年にジャック・ビルヌーブにチケットを手配してもらってCARTを観戦したんだ。当時は日本の企業もほとんど参戦していないし、レベルも思っていたほど高くはなかった。「これならオレも表彰台に立てる」、「お金をいくら集めれば参戦できる」って皮算用があったんだ。でも、5年後にアメリカに行ってみたら、なにもかもが変わっていてビックリしたよ。

>「浦島太郎」みたいですね。

CARTの情報はそれほど日本には入ってこないから、95年当時と何ら違わないだろうって勝手に思い込んでいたんだな(笑)。トップチームのホスピタリティテントやトランスポーターはピカピカに光り輝いているのに、ウチのはこりゃナンだ!? ってくらいみすぼらしいんだから。愕然としたね。

ニューマン/ハース、ペンスキー:F1でいうところのマクラーレン、フェラーリ級。アメリカン・レース界きっての強豪チーム。

ジャック・ビルヌーブ:元インディ500及びCARTチャンピオン。1997年にはF1チャンピオンも獲得。輝かしい実績を携え、M.シューマッハのライバルと目されていたのも今は昔。現在はF1でザウバー・ペトロナスを地味にドライブ。1992年、全日本F3に参戦したとき以来、番長との交流が続いている。

ホスピタリティテント:ホスピタリティユニットと呼ばれる大型のテント。スポンサー接待やジャーナリストに資料を配布したり、ドライバーのインタビュー等の場として利用される。

トランスポーター:クルマや機材をサーキットまで輸送するためのトレーラー。
<strong>黒澤</strong> 琢弥 写真

>わずか5年で、ナゼそこまで変わってしまったんでしょう?

日本のメーカーが続々とCARTに参戦してきたのが原因。トヨタやホンダは勝たなきゃいけないから、お金とエンジンをドカッと持ち込む。チームも潤ってくれば、最新のコンピューターも手に入るし、より良いエンジニアも雇える。ジャパンマネーでCART全体のレベルはグッと上がったけれど、予算もわずか5年で10倍にも高騰しちゃったんだ。

>メーカーマネーとじゃあ勝負になりませんよね。

デイル・コイン・レーシングはオーナーが趣味でやっているような、よくも悪くもアメリカンなチーム。クルマをペイントするのは町のペンキ屋さんだし、サインボードを出すオジサンはカッティングシート屋さん。レース好きな連中がボランティアで集まってきた素朴なチームなんだ。最低限の体裁は保っていたけど、トップチームと比較したら全てが役不足だよな。

>チーム内のコミュニケーションは問題なかったんですか?

それもまた大アリ! メカニックがメキシコからの出稼ぎ労働者で、国ではフォーミュラ・フォードみたいな初歩的なクルマしか触ったことがない連中なんだ。最先端のレーシングカーを一生懸命に整備しようとはするんだけど、配線からメカニズムまであまりに違うから、知ってる技術だけではどうにもならないワケ。レーシングカーにはプラモデルみたいな説明書は付いてこないから、とんでもないモノが出来上がっちゃうんだ(笑)。

>子供の料理並みにヒヤヒヤですね。組み上げただけでも大したもんですよ。

旧型のクルマのカウルを外して、見よう見まねで組むんだけど、一年の進歩ってスゴイから同じローラのシャーシでも中身は全部違っているんだ。それっぽく溶接したり配線つないではいるけれど、メインスイッチを入れたら「ボン!」ってショートするし、エンジンをかけたらクランクが油圧に耐えられなくて破裂したり・・・。

<strong>黒澤</strong> 琢弥 イラスト
>そんなクルマで時速400kmのスピードバトルに挑むなんてヤバすぎますよ。

バトル以前の問題だな。エンジンがかからないんだから(笑)。かかったと思ったらアイドリングでエンジンブローするし、なんとか走らせて加速していくとミッションが1-3-2だったり(笑)。でもさ、メカニックの連中も国にいる家族や子供のために頑張っている。やれるだけのことはやっているんだし、怒るに怒れないんだよ。

>アメリカのトップカテゴリー参戦という輝かしい実績の裏で、とてつもないご苦労をされていたんですねぇ。

プレスを批判するわけじゃないけど、マスコミは舞台ウラをほとんど報道してくれなかったもんな。ワークス参戦の日本人ドライバー以外には、まるで興味を示さないんだから・・・。デイル・コイン・レーシングみたいな素朴な貧乏チームこそがアメリカン・レースのリアルな姿なんだよ。レースの結果なんかよりも、ファンが知りたい情報ってたくさんあると思うんだけどなぁ。

カウル:レーシングカーのシャーシを覆うボディのこと。

エンジンブロー:調整不良や過度な高回転によりエンジンが壊れること。
エキスパートプロフィール
取材日:2005年6月16日
連載期間:2005年7月7日〜8月25日(全8回)


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